最近よく耳にする“ロコモティブシンドローム(運動器症候群)”をご存じですか? 通称“ロコモ”とも呼ばれ、人間が本来持っている“立つ”、“歩く”といった運動機能が加齢などによって低下した状態のことを指します。
ロコモが進行すると、転倒しやすくなったり、寝たきりによる将来の要介護リスクまで高くなってしまう可能性があるのだとか。あなた自身がなることもあるし、あなたの両親や祖父母がなってしまうこともあり、決して他人事でありません。高齢になり、要介護や要支援の状態にならないためにも、早いうちからロコモ対策を行っておくことがおすすめです。
そこで今回は、ロコモについて適切な知識を身に着け対策を行うために、“ロコモティブシンドロームの基本とチェック法、さらには自宅で簡単にできる対策”をトレーナーである筆者がご紹介します。
この機会にロコモについての知識を深め、いつまでも毎日を健康的に過ごせるように目指していきましょう!
~ 目次 ~
ロコモティブシンドロームとは

厚生労働省の『e-ヘルスネット』によると、“ロコモティブシンドローム”については以下のように説明されています(※1)。
「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」とは、骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって転倒・骨折しやすくなることで、自立した生活ができなくなり、介護が必要となる危険性が高い状態を指しています。
ロコモになってしまう原因としては、加齢や運動不足などが主に挙げられます。通常、年齢を重ねて筋肉量がピークを迎えた後は、筋肉量が減少するのが一般的です。日常的に運動をしないことでどんどん筋肉量が減少していき、それに伴いバランス能力の低下なども引き起こされます。
また、筋肉と同じように骨の機能なども加齢とともに低下するので、骨粗しょう症などの疾患にかかり、ロコモになってしまうというケースも少なくありません。
ロコモ度をチェックしよう!
ロコモは高齢者だけではなく、若い人なども昨今の運動機会の減少によりなってしまうことが多いそう。知らぬ間に進行していないか、あなた自身はロコモなのかそれを判断するチェック方法をお伝えします。
今回は厚生労働省が出している下肢筋力を調べる『立ち上がりテスト』について紹介します(※1)。
まず、高さ40cmの台を用意します。そこに両腕を組んで腰掛けましょう。両脚は肩幅ぐらいに広げ、床に対してすねがおよそ70度になるようにして、反動をつけずに立ち上がり、3秒間保持します。
これができなければ「ロコモ度2」となり、移動機能の低下が進行している状態です。この両脚で行うテストができた方は片脚で行うテストを行います。
同じように、40cmの台に両腕を組んで腰掛けます。両脚は肩幅ぐらいに広げ、床に対してすねがおよそ70度になるようにします。左右どちらかの脚を上げ、上げた方の膝を軽く曲げます。そこから反動をつけずに立ち上がり、3秒間保持します。
どちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれない場合、「ロコモ度1」となります。これは移動機能の低下が始まっている状態です。
ロコモ対策の方法とは?

ロコモの対策法としていくつかありますが、筆者は運動量を増やすことをおすすめします。
厚生労働省による新しい身体活動基準で定められた基準を達成するためガイドライン『アクティブガイド』では、「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」をメッセージとともに、わかりやすく取り組みが紹介されています。(※2)。
「+10によって「死亡のリスクを2.8%」「生活習慣病発症を3.6%」「ガン発症を3.2%」「ロコモ・認知症の発症を8.8%」低下させることが可能であることが示唆されています。さらに減量効果として+10を1年間継続すると、1.5-2.0kg減の効果が期待できます。」というデータも明かされており、日常的な運動不足解消の解消が、ロコモの対策に有効であるといえるでしょう。
また、肥満などによる体重の増加が膝などの関節への負担を増加させたり、痩せすぎの虚弱体質などの人だと骨などの疾患が増えたりすることから、運動とともにバランスの取れた食事を心がけることがロコモの対策につながると考えられています。
まずは日常生活を見直して、日常的に階段を使うことや、食事の栄養バランスを考えることから始めてみましょう。
ロコモ対策におすすめのトレーニング
ロコモに対する知識を深められたところで、筆者がおすすめするロコモ対策におすすめのトレーニングを3つ紹介します。家でもできる簡単トレーニングで日ごろの運動不足解消を目指しましょう!
(1)脚全体を鍛える王道種目「スクワット」

脚を腰幅に広げ、つま先は45度程度外に向けましょう。背筋はまっすぐ伸ばしたまま腰を落とすように深くしゃがみこみます。膝の向きはつま先と同じ方向を向くように意識してください。
(2)更に追い込む「フロントランジ」

脚を前後に大きく広げます。前脚のつま先と膝を正面に向け、後脚の踵は常に立てた状態をキープします。背筋を伸ばし、まっすぐ下に腰を落とします。10回程したら前後の脚を入れ替えます。
(3)バランス能力を高める「シングルレッグデッドリフト」

片脚立ちになり、背筋を伸ばしたまま背中が床と平行になるように前屈をします。この時、可能であれば後脚の太ももを床と水平にして下さい。動作中は常に頭から脚にかけて一直線にします。股関節を起点に身体を動かすイメージで行いましょう。身体が左右に傾かないようしっかりコントロールするのがポイントです。逆側も行います。
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いかがでしたか? 今回はロコモについてご紹介しました。高齢化社会を迎えている日本では、誰にとっても他人事ではないでしょう。また運動の機会の減少により若い人でもロコモになる人も増えてきているそうです。
まずは、毎日の運動習慣とバランスの良い食生活を意識して、いつまでも快適に過ごせるように今から対策をしていきましょう。
【画像・参考】
※1 ロコモ度テスト | e-ヘルスネット(厚生労働省)
※2 アクティブガイド | e-ヘルスネット(厚生労働省)
※Kate Kultsevych、Africa Studio、allensima/Shutterstock
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